建築学科ごっこ

建築学科ごっこを通じて見つけた、模型作成、図面加工、時間管理などやりかたまとめ

エスキスを素早くまとめるために、センスや思考力よりもはるかに大切なこと

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一日1枚

 

一ヶ月で30枚

 

図面をフリーハンドで模写し続けて思ったこと。

 

 

実際は一日に5枚描いた日もあれば全く描かなかった日もある以上、厳密に言えば一日1枚と言うのは嘘ですが、一ヶ月で30枚という目標は達成しました。

 

 

 

 

 

結論から言えば、もっと早い時期から図面模写を始めるべきだったと言うのが正直な感想です。

一日1枚というスローペースであったにも関わらず、かなりの成長の手応えがあったからです。

 

 

 

特に

「とにかくエスキスが苦手

「アイデアが出てこない」

「仮にアイデアが出てきても、設計としてうまくまとめられない

「時間をかければかけるほど、当初のアイデアから乖離した不格好な設計になる」

と悩んでいた、当時の自分に教えてあげたい。

 

シンプルな反復練習に基づく基礎力こそ、君の苦境を改善する唯一最高の武器である、と

 

 

 

 

とにかくエスキスに時間がかかって仕方がなかった 

設計課題が間に合わず、締め切り前に徹夜続きになるのって、だいたい以下の3つが原因ですよね。

 

  • 企画:アイデアが浮かばない
  • 設計:アイデアを具体的な形としてまとめられない
  • 表現:形としてまとまった図面を模型・パース・プレボとして纏めるのが遅い

 

僕はこの中でも特に二番目の「設計」が大の苦手です。

(この時点で明らかに建築学科に向いてないですね。でも同じ境遇の人は多いのでは?)

 

建物の大まかな外観・造形を決定するのも苦手でしたし、いざ決定すると今度はその形の中にうまく諸機能を納めることができません

 

例えば階段・エレベーター・トイレなどの一般的にコアと呼ばれるような機能。

平面的に見れば、これら3つはエントランスホールを入ってすぐ視界に入るほうが好ましいですよね。

また、一定以上の規模の建築なら複数のトイレや階段が設けられますが、これらはお互いにある程度離れていることが構造上・防災上・或は機能的にも好ましいです。

一方でこれらは上下階がつながっており、平面だけでなく立体的にも設計上の制約がかかります。

 

 

こうした幾つもの条件を満たしつつ、最初に思い浮かんだアイデアを活かす建築の形を考える。

こんな高難易度なパズル、建築を学び始めて数年の学生にまともにできるはず無いじゃないか! と課題の度に感じていました。

 

 

それでもどうにか食らいつき、なんとかアイデアを形にまとめて提出するのですが、その度に消化不良な思いを繰り返していました。

 

当初思い浮かんだアイデアに自信があるだけに、或は模型作りやパース作成作業が好きなだけに、この課題中盤の停滞には随分と苛まれました。

 

 

「一体何を根拠に設計を進めればいいんだ!」

「どんな知識を得れば、どんなトレーニングを重ねれば、エスキスのスピードが上がるんだ!」

そう悩んで色んな人に話を聞いてみたり、本を読んだりするものの、結局満足の行く答えを得られる事はありませんでした。

 

結局才能やセンスや頭の回転の早さの問題なのか?

人には向き不向きがあるのだから、諦めるべきなのか?

 

そんなことをよく考えたりもしていました。

 

 

実際この答えはまだ出ていませんし、僕は今現在も自分が建築学科に向いていたとは考えていません。

(僕の自己評価については、ブログタイトルからお察しください)

 

 

 

ただ、一つ言えるのは、上記のぼくの状況は諦めるにはまだまだ早すぎるということです。

 

 

 

ほとんどの建築学科生は反復練習が足りてない

 ところで、皆さん。

RPGゲームってどのくらいやたことありますか?

 

ドラクエポケモンなどのゲームには「経験値」という概念があります。

  1. スライムなどの雑魚キャラを倒し、経験値を積み、主人公の成長させる
  2. 仲間や武器を集め、使える技を増やし、主人公の成長を補強する
  3. ある程度強くなったら中ボスを倒し、イベントを進める(負けたら弱点補強)

 

多くのRPGゲームは上記のような流れを辿ります。

 

そして、この流れは同時にあらゆる能力や才能の成長にも通じる、努力の見本だと考えています。

 

 

数学

  1. 基本問題を繰り返し解き、確実に解ける問題を増やす
  2. 参考書を読み、応用問題への対応力を磨く
  3. 模試や定期試験で実力試し&自己分析で次のステージへ

 

野球

  1. 素振りやキャッチボール、ランニングで基礎能力を向上
  2. フォームの確認や性能のいい道具を使用し、実力を発揮できる状況を作る
  3. 練習試合で経験を積み、明日からの練習に活かす

 

イラスト・漫画

 

  1. 模写やスケッチ、デッサンなどの練習を重ねる
  2. 教本を読み、着彩のコツや人体の構造への理解を深める
  3. 作品を製作・発表し実績を積むとともに新たな境地を目指す

 

 

どんな業界であれ技能であれ、基本的には

「1.模倣→2.技術→3.実践」

の繰り返しが成長の基本であり王道です。

 

ゲームが楽しいのは、基本的にこの成長過程を擬似的に体験できるからかもしれません。

 

 

では、建築学科はどうでしょうか?

 

建築学科で言う中ボスとは、おそらく課題のことでしょう。

旅の途中で手に入る武器やスキルは、読書で身につける建築の知識、もしくはIllustratorなどのソフトを扱う技術に当たるでしょうか?

 

 

では、建築学科の雑魚キャラとはなんでしょう?

 

確実に攻略できる敵を繰り返し倒し、

確実な成果をあげ経験値を得て、

「敵を倒す」という感覚を積み重ね、

中ボスに向けての本質的な能力向上を目指す

 

上記の条件を満たす建築学科における雑魚キャラとは何でしょうか?

そして、あなたは建築学科に入学してから、はたしてどれほどの雑魚キャラを倒してきたでしょうか?

 

 

僕が、図面模写をはじめた理由、そして設計がうまく進まなくとも建築学科を諦めるにはまだ早いと断言する理由はここにあります。

 

多くの建築学科のカリキュラムには、この基礎的能力を向上させる反復練習が含まれていません。

 

 

 

 

つまりこういうことです。

 

  • 野生のポケモンを倒すこと無く殿堂入りを目指すポケモン→ゲーム上級者の縛りプレイ
  • 日頃全く勉強せず、テスト本番だけ本気で取り組む学生→天才、あるいはただのバカ
  • 試合中に成長する野球選手→スポーツ漫画の主人公かよ
  • 絵はヘタだけれども模写は嫌い。ひたすら漫画だけ描きまくる。→よほど絵が好きじゃないといつか心が折れる


  • 学校から与えられた課題には取り組むけど、自主的なトレーニングは一切しない建築学科生→???

 

もとより僕に、全国の建築学科を軽蔑したり、非難したり、哀れんだりする意図は毛頭ありません。

要するに、建築学科というのはそういう場所だということです。

 

 

 

もしあなたが、

 

  • 建築学科を高難易度プレイで過ごしたい建築学科上級者
  • 日頃は怠けていてもここぞという時には最大の力を発揮できる天賦の才
  • 主人公補正の星の下に生まれたヒーロー体質
  • 建築が好きで好きでたまらず、他人の評価など興味がない建築設計マニア

 

 

このどの条件にも満たないのであれば、あなたの建築学科ライフがうまくいかないのは当たり前です。

 

けしてあなたに才能が無いわけでも、あなたが怠けていたわけでもありません。

 

 

もともと、建築学科というゲームのゲームバランスがおかしいのです。

雑魚キャラを登場させること無く、ひたすらに中ボスとの戦闘を繰り返させる、極めて難易度の高いゲームなのです。

 

 

 

だからといって、建築学科や教授ばかりを責めても仕方ありません。

それに、筆者としては建築学科の実習中心主義までは否定していません。

建築家として必要な技能を身につけるには、課題中心のカリキュラムは必須だと考えます。

 

 

だからこそ、建築学科生各個人のトレーニングの重要性について、もっと言及すべきだと考えています。

この事実に気がついていないが故に、努力しても努力しても報われない、孤独感と無力感に苛まれている建築学科生が大量に生まれているとさえ思います。

(厳しいカリキュラムで建築学科生を淘汰することが目的ならわかりますが……)

 

とくに、模範的な建築設計を文字通り体得する模倣・反復系のトレーニングは建築学科に最も不足している栄養素ではないでしょうか?

 

そしてそれを補う方法の一つが前述の図面模写なのです。

 

 

 

 

エスキス力を鍛えるために必要なのは図面模写

図面模写のポイントは以下の3つです。

  • あなたのエスキスが進まないのは、思考力や計画性やまして才能の問題ではない。
  • 平凡だが良質な図面を繰り返し模写することで建築学科生としての基礎力をみにつける
  • 「何も見ないで描ける図面」の積み重ねが、無意識レベルの判断力を磨く

 

ポイント1:思考力や計画性・才能のせいと諦めるのはまだ早すぎる

とにかく、建築学科生の99%は不必要な劣等感と無力感を抱えているといっても過言ではありません。

ほとんどの学生が抱える「わたし建築学科向いてないのかなぁ」は幻想です。

 

たしかに、建築学科生は学年が上がるごとに、明らかに能力差が生じてくることは事実です。

そしてそれが自分の実力を出し切った結果としての能力差なのであればそれは残酷な現実として受け入れなければならないでしょう。

 

 

しかし、多くの建築学科が抱える悩みとは、実のところ自分の実力を発揮できないまま今回も締め切りを迎えてしまったという消化不良感に起因しているのではないでしょうか?

ぼくの睨むところでは、建築学科を取り巻く無力感の原因は、各学生個人個人の責任というよりも、適切な努力の方法を与えられないままひたすら課題に追い立てられて消耗していく現状、そしてそれに疑問を挟まない建築学科という環境全体にあります。

 

一方で、建築学科生の徹夜も惜しまない勤勉さ、向上心溢れる雰囲気は大きな長所だとも考えています。

 

もし、自分の弱点を分析し、その的確な補強方法を学び、自分の思考や能力を最大限発揮できる環境さえ整えば、すべての建築学科生、誰もが別人のように成長できると確信しています。

 

 

ポイント2:シンプルな図面を何度も何度も模写しまくる

ではどうすれば、本来の能力を開花させることができるのか?

もちろんすべての人に当てはまる最適解などありません。

また、筆者自身自分の能力がすべて発揮できたと感じることなど殆どありません。

 

 

しかし、図面を模写することを通じて、明らかにその前後で設計に対する手応えが変わることを実感できたのは事実です。

やってもやっても手応えのなかった設計演習を繰り返した当時の自分にとって、確実に自分の成長を体感できたことは大きな希望でした。

 

 

もちろん、それまで図面模写をしたことは何度もありました。

設計課題が与えられる前の一回生の頃も、吉村順三の「軽井沢の山荘」の図面模写が課されたこともあります。

(これはどこの学校もやってる定番の課題のようですね)

 

ここで言う図面模写とは、それと少しだけ目的が違います。

 

筆者の言う図面模写トレーニングの具体的な方法は以下の3つです

 

  • 模写する図面は平凡で独創性やオリジナリティは無いが、建築として破綻や無理のない模範解答的な図面(一級・二級建築士の製図試験模範解答など)
  • その図面を目で見て別の紙に模写する(≠薄い紙を重ねてなぞる「トレス」とは別)
  • 道具は「鉛筆(シャーペン)」「前述の図面」「A4サイズの方眼紙」のみ。(インキング用のペン・定規・消しゴム・大きなケント紙・仕上げ用のコピックや色鉛筆は不要)

 

 

そして大切なのは同じ図面を繰り返し繰り返し模写する事、そしてそれを通じて何も見なくてもスラスラ書ける図面のストックを増やす事、この2点です。

(基本、日を開けて3回同じ図面を模写すれば、よほど複雑な図面でなければ覚えられます。)

 

 

建築学科に入ってから量より質を重視した、あるいは発想力や構想力を試すような課題が与えられ続けます。

そのアンチテーゼとも言えるこのトレーニング。

 

だからこそ以下のような工夫は本記事の趣旨からは外れます。

  • 人の図面を模倣・暗記するとオリジナリティが死ぬので、毎回毎回自分なりのアレンジを加える
  • きちんとした図面を各能力を着けるため、真っ白な紙に一から下書きし、ペン入れ・着彩も施す
  • 同じ図面を繰り返すとあきるので、毎回違う図面を模写する

こうしたアレンジはけして悪いとは言いませんが、従来の設計実習で重視されてきた側面を軽くなぞるだけになってしまうでしょう。

 

本記事で取り上げているのは、従来の設計演習では実力を発揮できなかった学生が、これまでの方法論に固執すること無く新しい自分を開拓するためのトレーニングです。

 

だからこそ、質より量、オリジナリティではなく安定感と基礎力の向上という、従来の建築学科では軽視されてきた能力に力を注ぐべきなのです。

 

 

 

 

ポイントその3:「何も見ないで描ける図面」の積み重ねが、無意識レベルの設計センスを磨く

ではなぜ模倣とスピード重視の反復練習が重要なのでしょうか?

それは一口で言うならば無意識レベルの意思決定の精度を向上させるためです。

 

 

人間、絶好調で脳が快適に稼働する日もあれば、特に理由もないのに体調が悪く、思考の切れ味が悪い日もあります。

時間が十分にあり、ああでもないこうでもないと迷えるときもあれば、ミーティング中のように、その場で情報を整理し次々と新しいアイデアを絞り出し、伝えていかねばならない状況も存在します。

住宅系の設計が得意な人もいれば、商業系の設計が得意な人もいるように、設計内容での得手不得手も千差万別でしょう。

あるいは、事前に十分な情報収集ができず、不確定な環境で物事を決めなければならない事態に直面することも考えられます。

 

 

このように、その時の状況やシチュエーションによって人間の思考はムラがあるものです。

最大限の能力を発揮できるときもあれば、何らかの理由で追い詰められた状態のなか意思決定をしなければならないことも多々あります。

特に建築学科では、時間的・体力的に限界の中設計をしなければならないこともあるでしょう。

 

 

そして基礎トレーニングとは、そういった能力の下限、自分が出力できる最低限のパフォーマンスを底上げする効果があります。

 

 

時間を掛けた質の高い思考訓練が思考力の上限値を引き上げるトレーニングだとすれば

スピードを重視しお手本を繰り返し模倣するタイプのトレーニングは思考の下限値を底上げするトレーニングだといえるでしょう。

 

そして何度も述べている通り、建築学科生を苦しめているのは自分の設計能力が頭打ちになっている焦燥感ではなく、足を引っ張っている能力があるが故に全力を出しきれない閉塞感にあります。

 

 

これが、僕が建築学科生に反復練習が必要だと考える理由です。

 

 

 

  • 設計課題が出された直後に真っ先に思い浮かぶ設計案の質
  • 体力も気力もボロボロの状態で描いた図面の質
  • 限られた時間でアイデアを出し合うワークショップ中に提案する直感的なアイデアの質

 

 

こういった、直感や反射、あるいは閃きといった言葉に代表される無意識レベルの意思決定は、これまでの人生経験や趣味嗜好、そして反復練習で培った「慣れ」によって左右されています。

いいかえれば、反復練習を積み重ねることで、これまでセンスや才能だと思っていた領域すら開拓できる可能性が見えてくるのです。

 

 

一ヶ月間図面を模写してみれば……

個人的に模写するオススメは、一級・二級建築士の製図試験模範解答、あるいはそれに準じる設計問題とその解答です。

基本的には二級建築士は二世帯住宅や店舗併設住宅などの住宅系建築、一級建築士は図書館や美術館などの中規模公共建築や商業建築が出題されています。

 

建築技術教育普及センターのホームページでは、過去三年分の過去問とその解答例が公開されています。

一級建築士試験 試験問題等 建築技術教育普及センターホームページ

二級建築士試験 試験問題等 建築技術教育普及センターホームページ

 

ただ、近年の建築士試験の製図問題は難化傾向にあるうえ、解答例に解説がないため初心者には不向きかもせれません。

 

そのため、過去の製図試験のデータと模範解答、或は本番を想定した練習問題を掲載している本やサイトを活用するのがベターかもしれません。

製図練習課題/1級建築士製図対策室

二級建築士「設計製図の試験」練習課題

 

1級建築士 過去問題集チャレンジ7 平成29年度版

  

2級建築士 過去問題集チャレンジ7 平成29年度版

 

 

世の中、悩んで答えを出すべき問題もあれば、調べたり暗記したりして解決すべき問題もアリます。

また、時間をかけて悩めば悩むほど質の良いアイデアが出るかといえば、必ずしもそうではありません(むしろ全く逆のことのほうが多いですよね)

 

 

にも関わらず、建築学科生には「とにかく時間をかけて悩みまくる」という武器しか与えられていないのが現状です。

同じ努力にしても、闇雲に努力するだけでなく、時には努力の質を変えてみることもわせれないようにしたいものです。

 

 

図面模写

 

このシンプルなトレーニングこそ、すべての建築学科生が見直すべき最良のトレーニング方法だと考えています。

もっとセンスが良くなりたい、いつもエスキスに時間がかかっている、全力でいろんな課題に取り組みたい、そう考えている方に推したいトレーニング方法の話でした。

 

 

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