建築学科ごっこ

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実例で解説!建築プレゼンボードの考え方

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以前練習用に作成した集合住宅のプレゼンシートを例に、プレゼンシートやポートフォリオのレイアウトについてこうした方がより見やすくスッキリするんじゃないかな?と考えている点を紹介します。

 

別にこの方法に則れば先生に褒めてもらえるとか、コンペで賞を取れると行ったたぐいのものではなく、あくまでぼく自身の考えや独学で学んだ内容のまとめです。

 

ただ、あまりにもプレゼンボードにまつわる書籍やサイトが少ないため、少しでも参考になれば幸いです。

 

 

 

今回は3枚のプレゼンボードを使って集合住宅の設計をまとめたものを例として取り上げます。

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単に紙面内に図面やパースを納めているだけでなく、なぜそこにその情報を置いたのか、どういう順番で説明すれば相手に理解されやすいか、等について工夫した点を中心に解説していきます。

 

 

 

【1枚目上部】その設計を一言・1枚で言うと?

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プレゼンボード1枚目の役割はとにかく3秒で相手の心をつかむことです。

 

それがコンペにしろ大学の課題にしろ、大抵の場合、あなたのプレゼンボードは大勢の学生の大量の作品のうちの一つに過ぎません。

その全てに目を通す審査員や教授にしてみれば、必然1枚あたりに掛けられる時間を削らざるを得ません。

 

ですから、あなたが作品の魅力を読み手に伝えるには、読み手が目を向けてくれたわずか十数秒の内にその建築は既存のアイデアに比べてどのような特徴を持ち、どのような点が魅力的なのかを伝えなくてはなりません。

 

 

そのために重要なのは作品タイトルキービジュアル、そしてコンセプト文です。

この3つ(特に最初の2つ)だけみればあなたの作品がどんなものか分かる物である必要があります。

またこの3つだけは瞬時に目に入るよう、わかりやすい位置に大きく目立つようレイアウトしなければなりません。

 

実際多くの建築プレゼンシートは一枚目の紙面上半分丸々キービジュアルに割いているが多いですし、タイトルもタイトルだけ見れば他の作品との違いやその設計の意義が分かるよう工夫されています。

 

というわけで、プレゼンボードを作る上で、いちばん大事なのはこの1枚目でいかに相手の心をつかむか?という点になります。

 

 

ちなみにキービジュアルでは模型写真や手描きパース、3Dパースが代表的ですが、断面図や平面図が特徴的な設計の場合、それら図面がプレゼンボードの主役を担っているものもあります。

 

 

【一枚目底部】設計背景・計画コンセプト・造形コンセプト

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キービジュアルに大きく紙面を割いた1枚目。

キービジュアルとタイトルを見て興味を抱いた読み手の注意をさらに惹きつけるために、ページ下部分に少しだけ文章やダイアグラムのためのスペースを用意しました。

 

  1. 敷地・設計背景
  2. 計画コンセプト
  3. 造形コンセプト

 

この3つを伝えてなぜその建築が必要なのかという説明を行っています。

 

1.敷地・設計背景

 

建物を設計するということは当然その場所にその建築が必要である何かしらの理由があるはずです。

 

どういう層の需要を意識してプログラムを組んだのか?

どのような社会的課題を解決することを目的としているのか?

果たしてその設計は誰を幸せにするつもりで設計したのか?

 

1枚目の一番最初に語るべきは、こうしたその地域やありきたりな設計ではこんな問題点がありますという問題提起だと考えます。

 

 

逆にこうした課題を読み手と共有しないままあなたの設計を説明しても、読み手からは「斬新な設計なのはわかったけど、その設計は作る必要のあるものなの?」という質問が飛んで来るだけになってしまいます。

 

今回は社会性のやや薄い集合住宅のプレゼンボードなので周辺敷地に軽く触れるだけと控えめですが、歴史性や社会性の強い設計課題やコンペの場合は、ここのエリアはもう少し大きく使います。

例えば地域の歴史や都市的文脈を意識した課題であれば古地図や産業の変化を示した統計データ、観光の新しいあり方を提案する設計であれば従来型観光と提案する新しい観光のあり方の違いやメリット・デメリットを示す表など、どちらかというよりも建築というよりは経営や社会学に近い内容といえます。

 

ここでよく使われるのは地図・統計グラフ・敷地周辺の写真など。

ダイアグラム化が難しい内容だけに、文章ばかりにならないよう注意が必要なスペースです。

 

 

2.計画コンセプト & 3.設計コンセプト

1.で地域や建築が抱える課題が見えてきた所でそれをどのように解決するのかを説明する必要が出てきます。

「なるほど、君の建築が実現すればいろんな人が困っていることを解決し、皆が笑顔になれそうだ!」と感じてもらう必要があります。 

 そこで必要となるのがコンセプトであり、ダイアグラムです。

 

【2枚目】平面図で建物の全体像を描く

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二枚目でまず意識したのは読み手に建物の全体像を理解してもらうことです。

一枚目底部にて読み手と問題意識を共有した所で、今度はその問題の解決のためにどのような空間操作を行ったのかを伝える義務が生じます。

(問題提起だけ行って具体的な解決策を示さないのは建築家として、というか仕事人として駄目ですよね?)

 

そこで、空間的なダイアグラムや鳥瞰パース、平面図を用いてその建築がどのような造形・構成を持っているのかを説明しなければなりません。

「ブロックを二重らせん上に積み重ねてできた美術館なんだな」とか

「一見複雑に見えるけど、HPシェルを複数並べて繋いで作られているだけなのか」とか

「古い建物にガラスの箱をインサートして新旧を対比させることが目的なのか」など

目的に対してどんな手法で立ち向かった建築なのかを理解してもらうことが目的です。

 

 

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建物の全体像を把握してもらうために大切なのは平面図です。

 

なぜなら、平面図は建物を理解する際の起点ともなる重要な図面だからです。

 

そのため幾つかの工夫を施すだけで相手の建築に対する理解度が大きく変わります。

 

まず人は平面図を見る時にどのように見ているのでしょうか?

 

僕は初めての建築設計課題の際、教授に「平面図は目で歩け」と教わりました。

 

うまく言語化することは難しいですが、要するに自分が小さな人になったつもりで図面の中に入り込み、玄関から目的地までのシークエンスを想像しながら迷路のように図面内をなぞるかのように図面を見ることです。

おそらく皆さんも平面図を見たときは、無意識のうちに平面図内を目で歩いているのではないでしょうか?

 

 

ですから、僕は平面図を仕上げる時には「目で歩く」ことを意識しています。

 

 

平面図には目で歩きやすい平面図とあるきにくい平面図(=わかりやすい平面図とわかりにくい平面図)があります。

 

歩きやすい平面図の特徴は以下の様なものです。

  • 出入り口に▲マークがあったり、前面道路がしっかりと書き込まれているため、どこから図面を見始めればいいかわかりやすい
  • 壁の中が塗りつぶされている、線の太さに強弱がある、陰影が書き込まれている等の立体感を与える処理が施されており、どの線が壁でどの線が段差なのかわかりやすい
  • 床面が色分けされており、(もしくはテクスチャやハッチング処理が施されており、)どこまでが屋外でどこまでが屋内かひと目で分かる。
  • 同様に、どこまでが土足空間でどこまでが裸足で歩ける場所なのか、どこまでがプライベートなエリアでどこまでが公共な空間なのか、ひと目で分かる。
  • 添景が豊富で、臨場感があり、図面上に寸法や部屋名がなくともスケール感や部屋の機能が読み取れる
  • キービジュアルのパースや他の立断面図と方角が一致しており、頭のなかで平面図をくるくる回さなくともその内観や外観がイメージできる

こうしたほんの僅かな差が、設計の魅力を伝えるための大きな鍵となるのです。

 

【3枚目上部】人々のアクティビティをイメージさせる

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平面図を目で歩いただけでは空間同士の関係はわかりますが、それぞれの部屋の具体的な雰囲気や、人の目線から見た風景はわかりにくいですよね?

そこで必要なのが内観パースやスケッチです。

 

その空間でどのような人々の営みが行われるのか、等身大の視点で見た建物が描かれ、具体的にこの建物に入り込んでる自分をイメージしながら建築を想像することが出来ます。

 

 

ここで最も威力を発揮するのが手描きスケッチだとおもいます。

今回のプレゼンボードでは利用していませんが、プレゼンボードにおける手書きスケッチ最大の役割は、この人々のアクティビティの表現にあると考えています。

 

たとえば、「スタジオ」とよばれる多目的スペースを設計したとして、プレゼンボードに「個々は可動台を組み合わせることで、多様なイベントシーンを生み出します」と書いたとしても、具体的なイメージが膨らみにくいですし、説得力に欠けます。

 

しかし、ベンチの並ぶ共用空間・プレゼンテーション・ワークショップ・シンポジウム・立食パーティ・展示スペース・ダンスステージと具体的なイベントを提示しスケッチとともに表現すれば読み手への理解がうんと深まります。

これはパースや模型写真・図面には出しにくいスケッチならではの特徴だと考えています。

 

【3枚目下部】補足としての立面図

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立面図はその建物の外観を客観的に伝える図面です。

模型写真やパースで代用できる面が強く、アイデアコンペなどでも真っ先に省略される図面です。

今回は建物の外観をイメージさせるグラフィックが少なく、されどそれほど外観が重要な建物でもないと考え立面図2枚にとどめました。

 

そのかわり、キービジュアルで断面パースを採用し、断面アクソメ図も二枚目に設けたことから断面図は省略しました。

 

 

まとめ

全体としては

 

  1. 建物の特徴を一言・1枚で表現
  2. どのような問題を解決するためにこの設計をした?
  3. その問題を解決するためにどのような空間を作った?
  4. 平面図を通して全体像の把握
  5. 内観パース・立面図により人の視点から見たイメージの把握

 

という流れです。

 

またちょっとした工夫ですが、2.~5.と後半へ行くに従って建築を見るスケールを社会的な視点から等身大の視点へ徐々にスケールダウンさせています。

社会的な視点だけのプレゼンでは親近感やリアリティがわきませんし、等身大視点だけのプレゼンでは逆に視野の狭い、独りよがりな建築だと思われてしまう恐れがあります。

しかし、いろんな視点を行ったり来たりするプレゼンは読んでいて頭を使うため、このように徐々に全体像から細部へとクロースアップしていく構成にすることで、抵抗なく相手に設計を理解してもらえるのではと考えています。

 

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