建築学科ごっこ

せめて、建築学科生のふりはしていたいから

模型材料があふれる理由とそれを根本的に解決する整理術 

建築学科の製図室は汚い。

その最たる原因はあふれんばかりの模型材料にある。

 

大学によって散らかり方の質も量も違うだろうけれども、「建築学科 製図室 」で画像検索すればだいたいどこの学校も似たような状況にあることが窺える。

 

建築学科生にとって製図台周りの整頓は大きな課題だ。

各学生に振り当てられた僅かな作業空間で製図道具や模型材料を保管しながら図面を引き模型を作るのは簡単なことではない。

 

しかし、これまで製図台周りの整理整頓は個人の裁量に任せられており、「こうすれば快適に作業できる」というノウハウやアイデアは、些細なものも含めて全く広められていない。

 

当記事は製図室の床に散らばる模型材料をどのように管理するかに焦点を当てた、建築学科による建築学科のための整理術紹介だ。

  1. 製図室の現状分析
  2. 整理がうまくいかない理由
  3. 模型材料整理の目標
  4. 模型材料を整理するアイデア
  5. この方法の利点・メリット
  6. 補足

以上の流れで具体的に解説する。

 

 

 

 

1.    製図室の現状分析 

あなたは自分が今どの材料をどのくらい持っているのか把握しておらず、既に購入済みの材料を再購入してしまった経験は無いだろうか?

 

逆に材料の在庫量を読み違えて真夜中に材料が不足し、明日まで作業を中止せざるを得なくなった経験はないだろうか?

 

あるいは、製作中に捨てるには惜しい微妙な大きさの材料が残り、「何かに使えるかも」と保管したものの、他の材料に埋もれて忘れ去ってしまうことはどうであろうか?

 

小さめの部材を切り出す際、手頃な大きさの材料が埋もれているのに気づかず、新品の大きな材から切り出してしまったことはないだろうか?

 

 

 

こうしたことを繰り返すせいで中途半端な面積の材料ばかりたまり、いざ敷地模型のような大きな模型を作るときにどれも使えないと言うもどかしさを味わったことも一度や二度ではないだろう。

さらに言えば、専用の棚がないアトリエの場合、材料を床に直置きするが故に、歪み、傷み、汚れてしまい、いつ買ったかも覚えていないケント紙やスチレンボードが使い物にならなくなっていることもしばしばである。

 

こうしたことが続くと、手元に材料は余っているにも関わらず保険のためにやや多めに材料を買い溜めるようになる。

 

多くの者が模型材料を分類・整理せず保管しているため、必要以上に材料を購入してしまい、それが溢れて机や床に散乱してしまうのである。

材料が保管場所から溢れているので、出すのも戻すのもスムーズに行かず、きちんと戻すのが億劫になる。

まして提出直前の一刻を争う時期に、飽和した模型材料をいちいち足元の隙間に納める手間をかけることは不可能に近い。

 

以上の経験から、本記事では建築学科の製図台が乱雑になる原因を

材料の管理・検索が難しく、必要以上に材料を買い溜めてしまう

に定める。(無論これ以外の要因もあるが)

使える材料が手元にあるにも関わらず重複して買いすぎてしまうことは、お金だけでなくスペース的にも全くの無駄である。

限られた空間を有効に使うためには、自分の持つ材料を常に把握し、種類や量を定期的に棚卸ししなければならない。

 

 

しかし、これが中々どうして上手く行かないのだ。

次項では、模型材料の整理が困難な理由について考察する。

 

2.    整理がうまくいかない理由

模型材料の整理・管理・把握は一筋縄ではいかない。

その理由は、デスクワークにおける書類の整理が難しい理由と大きく異なる。

 

第一に、模型材料は大きさも形も不揃いで規格化ができない

材料の多きさがあまりにも違うため棚を作ろうにも収納ボックスを用意しようにもスタンドで仕切って整理しようにも、寸法が決められないのだ。

A1~A2サイズ程度の大きさを意識して棚を作ると、奥行きが深すぎてA4サイズの材料が埋もれてしまう。

かと言って小さいサイズに合わせて箱を用意すると、今度は大きいサイズの板が収納できなくなる。

また、その割合が変動するのも問題である。

課題前半は新品の材料が多いため、大きめのサイズの材料の保管が求められるが、提出直前では添景や建具のための比較的小さな模型にあわせた細々とした材料が増えていく。

収納ボックスはこの大きさと数の変化に対応できなければならない。

 

 

 

第二に、模型材料の種類が豊富で、分類整理ができない点だ。

ざっと考えてみても、スチレンボード、スチレンペーパー、ダンボール、ケント紙、画用紙、スノーマット、ミュージアムボード、プラ板、アクリル板、バルサ材といった具合に、定番の板状の材だけでも豊富な種類がある。

これら全てを材料別に分類していては収納スペースがいくつあっても足りない。

おまけに、こうして分類したところで前述の大きさの問題は何一つ解決していない。

各材料の大きさや量は課題が進むに従って変化するため、それに対応できるフレキシブルな保管方法が求められる。

しかも、大きな材料の中に小さな材料が紛れ込んでしまい死蔵となってしまう問題も顕在である。

また、次第に分類が面倒になり、つい適当な箱に材料を戻してしまう可能性が高い。

特に「その他」の分類を設けた場合、この便利な分類はあっという間になんでもかんでもここに投げ込んでしまう「収納のブラックホール」化することうけ合いである。

 

 

最後に、材料の捨て時がわからないという問題がある。

 

捨てることは、整理整頓のためのもっとも重要な行為である。

 

単純な話、材料が溢れて困るのなら、いらない材料から捨てていけばいいはずだ。

しかし、残念ながら建築模型材料は断捨離が難しい。

建築材料のうち、いらないものから捨てると言う考えはひどく正しい。

では、ある模型材料が「不要か否か」判定する基準は何であろうか?

 

 

建築模型の材料で不要なものとは、すなわち細々とした端材である。

大きい材料は細かくできるが、小さい材料をつなぎ合わせて大きくすることができないため、どうしたって面積の小さな材料は価値が低くなる。

 

しかし、大きければ大きいほどいいかというと無論そんなことはない。

10センチ四方の材を切り出すにはA1サイズのスチレンボードよりもA4サイズのスチレンボードからのほうが、楽にきれいに切り出せる。

手頃な大きさの模型材料はときに馬鹿でかい材料よりも使い勝手がいい。

だから、ある模型材料を捨てるか保管するかはその大きさを基準に判断するのが得策と言うことになる。

 

 

では、どこからが捨てるべき小ささの端材でどこからが保管しておくべき大きさの材料なのか?

この捨てる基準が決められない問題が生じるのだ。

 

 

そのため、「まだ使えそうだ」という理由で端材を次々と溜め込む。

溜め込んだ材は他の材に埋もれて探すのが面倒になり使われもせず、捨てられもしないまま死蔵される。

 こうして、まだ材料はあるのに、探すのが手間になるから新しい材料を買うという悪循環が生じるのだ。

 

 

 

 

建築学科にとって大事なのは、課題後半の忙しくなっていく時期に溢れてくる材料やゴミとの戦い方である。

手持ちの材料を整理し、必要不必要を考えるのも惜しいこの時期に、いかにして材料の必要不必要を判断するか、その仕組を構築することが必要なのである。

 

 

 

3.    模型材料整理の目標

以上より、模型材料の整理に関する課題と目標が見えてきた。

模型材料の整理に関する目下最大の課題は

 

すべての材料を一望し管理できる

 

ことである。

材料の全貌がつかめれば、余計な買い物をすることもなく、模型作成もスムーズとなる。

 

 

更にそのための小さな課題として

 

  • 大きい材も小さい材もスムーズに保管・検索でき、材料の種類や多寡を瞬時に把握できる。
  • 管理ルールがシンプルで、使ったり戻したりするときにストレスなく出し入れできる
  • 最小限のスペースに収納できるコンパクトな保管
  • 材料の増減に合わせて拡張・縮小が容易かつ安価
  • 素材が収納可能容積を飽和した時、どれを捨てればいいかすぐに決定・発見でき、ノータイムで捨てられる。

 

が挙げられる。

 

もし本当にこれらが実現するとすれば、夢のような方法である。

果たしてこれだけの条件を満たす材料運用術があるのだろうか?

 

次項では、これらすべての条件を満たす画期的にして非常にシンプルな収納方法を紹介する。

 

 

 

4.    模型材料を整理するアイデア

いよいよこの記事の主題に入る。

 

最初にこの「超」整理法基本コンセプトを示す。

模型材料は「紙袋」に「大きさ別」に分類し「立てて」保管する

 

基本はこれだけである。

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導入は至って簡単かつ低予算ですむ。

 

  • A2サイズの紙袋1つ
  • A3サイズの紙袋1つ
  • A4サイズの紙袋2つ
  • 角型2号(A4サイズ)の封筒1セット

 

以上を100円ショップで購入するだけである。

もちろん自宅に既にある場合や、より安価に手に入る場合はそちらを使って構わない。

紙袋や封筒のサイズ・量は各自の材料の多さや量、収納スペースの大きさに合わせて決定してほしいが、どんなに広い作業場でも1000円以上の出費はかからないだろう。

というより、制作スペースが限られている以上、いたずらに材料を買い溜めるのは得策でないためこれくらいの分量がちょうどいいかもしれない。

 

購入したら、製図台の下などそれなりの広さがある空間にこれらの紙袋を広げる。

あとは、現在保管している(余っている)模型材料を、大きさ別に紙袋に入れていくだけである。

 

材種や厚みで分類する必要はない。

 

どの大きさの袋に入れるかは個人の判断だが、基本的に紙袋や他の材料に埋もれて見えなくならないように振り分ける必要がある。

袋内で材料が倒れて、紙袋の底に隠れてしまうようなら、ワンサイズ小さい袋に移し替える。

一番小さい袋でも埋もれるような更に小さな材料や、画用紙のように袋内で立たない材料は封筒に入れ、1つの板のように紙袋に保管する。(もしくは捨てる)

逆にA2の袋にも入り切らないような大きな材は、紙袋では管理しきれない(が、他の材料に埋もれてなくすこともないし、大きな材料はすぐに使われて小さな端材になる)。

A2サイズを超える材料は、より大きなゴミ袋などで下半分を保護し、壁に立てかけておけばよい(そしてなるべく早く加工し模型にすること)。

 

 

一度分類してしまえば、以降新しく購入した材料や、材料を切り出した後の端材も同様に、大きさに応じて袋にしまい込めばいい。

この操作を続けてゆくと、新規に購入した材料は上流の大きな袋にストックされ、使用される度に下流の小さな袋へと流れていく。

そして、現在の袋に収納しきれないほど材料がたまった時は、新たな紙袋を追加するか、一番下流の小さな袋内や封筒内の余剰分を捨てればいい。

逆に袋が余った時は、畳んでより大きな紙袋に差し込めばより広く空間が使えるようになる。

 

 

5.この方法の利点・メリット

この紙袋を使った大きさによる分類法は、3.の項に述べた目標をすべて満たす。

まず、すべての材料が一度に目に入る

少なくともどんな材がどの程度の量あるのかを感覚的に把握できる。

目的の大きさの材がほしいと思った時も、大きさ別で並んでいるので検索性も高い

 

また、シンプルな原理なので材料の出し入れやシステムの維持も簡単だ。

整理整頓で最も困難なのは「出したものを元の位置にしまう習慣」を身につけることだ。

特に複雑な収納ルールを課してしまうと、次第に面倒になりいつの間にか散らかってしまう。

しかし製図室の場合、いかんせん個人に割り当てられた作業スペースは小さく、一方図面も模型も素材も異常に巨大である。

このような作業空間では机の上に出しっぱなしにしようにも邪魔で仕方ない。

だから、模型材料の置き場所を定めれば、自然とそこにしまうようになる

 収納ルールがシンプルならば尚更である。

 

さらに、材料がいっぱいになったときに、捨てる材料を選別するのも一瞬である。

普段から自動的に小さい材料が川下に流れてくるため、いざ捨てるとなった時細かい端材を積み重なった材料の山から選別する必要がなくなるからだ。

 

 

また、副次的な効能として、掃除や引越が楽になる点があげられる。

本来紙袋の目的は持ち運びである。

紙袋にすべての材料を保管することで、席を移動させたり足元を掃除したりする負担がぐっと軽くなる。

 

 

また、材料を全て1箇所にまとめることで、材料がありさえすれば必ず見つけることができる

言い換えれば、ここに目当ての材料がなければ諦めて買うしか無いと次の手を打つ決断が早まるのである。

模型材料をあちこちに分散して保管していた頃は、「もしかしたらここを探せば見つかるかも」「やっぱりもう一度探せばあそこにあるかも」といろんな箇所を捜索せねばならず、次の行動までの踏ん切りがつきにくい。

保存場所を1箇所に固定するメリットはこんなところにもある。

 

以上が今回提案する模型材料の整理方法である。

確認のために、要点をまとめよう。

 

  • 材料は大きさ別に分類し、紙袋に立てて保管
  • 材料を使ったら大きさに応じて紙袋に戻す
  • 大きさ別なので検索性に優れ、材料全体の把握や管理が楽になる
  • 結果、余分な材料購入をする必要がなくなりゴミも出費もスペースの無駄も減る

 

 

6.補足

この方法のウリの1つは保管方法がシンプルな点である。

大きさに応じて袋に投げ込むだけと言う単純さが、課題に追われる建築学科生にとって好ましい。

 

しかし、可能であれば袋にしまう前に「オヒレやドーナツを切り揃える」作業をする事をオススメしている。

 

オヒレとは、材料を切り出した時に、L字型やコの字型になっている端材(図1-左)のこと

ドーナツとは、材料を切り出した時に、ロの字型や田の字型になっている端材(図1-右)のこと

である。

 

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 (無論説明の便宜上筆者が勝手につけた名称である。)

 

これらは2つの観点から保管上好ましくない。

 

第一に、これらは使える面積の割に余分な体積を食う

材が欠けていたり、中が空洞になっているため、大きな材料を切り出す事ができない。しかし、より大きな紙袋でないと収まらず、スペースのムダとなる。

 

第二に、これらは紙袋への出し入れの際、他の材料に引っかかりやすい

オヒレやドーナツを入れた後、別な材を上から袋にしまった時、その凹凸に引っかかったり、真ん中の空洞に入り込んだりすることで、次に出す際に1枚だけ引きずり出すことができなくなってしまう。

 

 

そのため、これらの端材は紙袋に収納する前に、極力凹凸を削り、長方形に近づくよう切り分けて収納したほうが良い。

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カッターで切るのが面倒なら手で引きちぎるだけでもよい。

手軽さが売りのこの方法で、しまう直前切り分けるのはいかにも面倒だが、出すときの手間やストレスを考えればぜひともこの一手間を加えることが望ましい。

 

 

7.おまけ

 

せっかく足元をスッキリと纏めたので、更に2点、製図室の足元に関して述べておく。

 

まず、足元のゴミは定期的に拾うこと。

よく机の上のゴミを足元に払い落としている者がいるが、こういう人間は「床はテメェのゴミ箱じゃねぇ」ということを理解してもらえるまで殴って構わないと思っている。

 

人間の足の裏は想像以上に神経が通っている。

わずか1mmの厚みの小さなゴミを靴越しに踏んでいてさえ、無意識下にはストレスが蓄積する。

これはスプレー用に床に敷いたダンボールや、延長ケーブルのような僅かな段差でも同様である。

また、プリント類も厚みこそ無いものの、滑らないよう意識の一部を奪われるためやはり踏みながら作業することはストレスとなる。

 

要するに、足元に散乱するゴミは、じわじわとあなたの集中力を削ぎ落とすとともに、体力や精神力の低下・怪我の誘発・模型の歪みを招く遅効性の毒薬なのだ。

 

 

 

 

次に、案外見過ごしがちなのがコートやカバン・帽子の置き場所である。

これらは床に置くわけに行かない以上、みな椅子の上や机の上に無造作においている。

背もたれがついていない椅子が支給される学校の場合、こうした身の回りの道具の置き場所を用意しなければならない。

 

基本的には壁や机の側面にフックを設けるだけで解決する。

足元空間に余裕があるなら、喫茶店でよくあるようなカバン入れのかごを用意してもいい。

かごの強度が高ければ、臨時の模型置き場や第2の机として活用できる。

逆にこうした「置き場所」がないと製図台や椅子の上にコート類を置かねばならずただでさえ狭隘な製図室がいっそう狭苦しくなる。

 

 

要するに、床の上にものを置かないことが肝心であるということだ。

 

 

 

あとがき

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記事タイトルの『「超」整理法』は野口悠紀雄氏の同名の整理法を紹介した本から借りた名前である。

この本で語られる整理法は、おもに大量の資料を扱うデスクワーカー向けに語られた、情報整理術である。

模型材料をまとめる本記事の整理術とは全く異なる内容ではあるが、単純なルールで要素を一元的にまとめる点や、自動的に捨てるべき不要な要素が抽出されるシステム性が共通しているため、僭越ながら名前を借りた。

 

材料を大きさ別に分類し、紙袋に立てて保存する。

実に単純で、素朴で、身も蓋もない方法である。

もしかしたら読者の周囲ではとっくに実践されており「何を今更」と感じるかもしれない。

あるいは、このノウハウは筆者の身の回りでしか適用し難い特殊解にすぎず、より普遍的で合理的な整理術があるかもしれない。

 

しかし、多くの建築学科生は「締め切り前の製図室は汚いもの」と諦観しており、床の上に散らばる模型材料をなんとかしようという発想すらない風潮を感じている。

 

仮にも空間に関する学問を修める以上、自らの作業を行う空間の品質にもう少し意識を向けてもいいと考えこのような記事を書いた次第である。

 

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