建築学科ごっこ

建築学科ごっこを通じて見つけた、模型作成、図面加工、時間管理などやりかたまとめ

手描きで平面パースを描く方法

 

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多くの教授は草案に手ぶらで来る学生に憤りを感じている

 

 

講義準備やゼミの打ち合わせ、大学学務課への提出物に論文の執筆その他山積する業務に追われる中、ただでさえ放漫な学生連中のおもりに業を煮やしている状況で、最低限の義務すら果たしてこない学生が憎悪の対象となっても仕方がない

 

 

かと言って学生が忙しいのもまた事実である。

人生の夏休みと言われる大学生だが、なにせ忙しいことで有名な建築学科生なのだから、教授の1/100程度には繁忙を極めていると言っても過言ではない。

それでも建築学科生は迫りくる草案地獄の中、次々とプレゼン資料を作り続ける事を強いられている。

 

 

 

一方で、短い時間の(多くの場合一週間)中で作成できる提出物などたかが知れている。

できれば、簡素な平面図・手描きスケッチのみで意図を伝えたいというのが本音だろう。

 

 

 

そこで、手描きで平面パースを描く能力が求められる。

 

 

 

 

 

今回は住宅設計課題の初回草案と仮定し、下記のようなエスキスを提出する事例を考える。

  

STEP1:図面の作成

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今回はスケッチブックに手描き(定規すら使っていない)で描き上げたが、もちろん方眼紙にハードラインで仕上げたものや、CADで作成しコピー用紙に印刷したものでも構わない。

いずれにせよ、建築として最小限の情報しか盛り込まれていない。

 

このスケッチを単品で教授に見せてもかまわないのだが、空間的にどこが開いていてどこが閉じているのか、どこから入りどこからの眺望が優れているのか等の情報が乏しく、話が広がりにくい。

特に決定的なのは高さ方向の情報がないため、全面ガラス張りなのか、腰まで壁の一般的な窓なのか、各部屋はどのくらい一体感があり、どのくらい分節されているのかがひと目でわかりにくいことである。

 

そこで、このエスキスに筆を加え、30分~3時間で情報量を増やすことにする。 

 

 

STEP1で重要なのは壁と建具のみを記入し、床のテクスチャや、添景を書き入れないことである。

段差や階段のみえがかり線、床材の仕上げの違う箇所を表す細線は書き入れるが、後々消すのであまり強く書かないよう留意すること。(CADで印刷する場合、極細くするか、印刷後に鉛筆で書き加えたほうがいい)

言い換えれば、建具・柱・壁などある程度太い線で表される線は、消す必要が無いのでペン入れしてしまって構わない。

 

STEP2:消失点を決め、Z軸方向の線を書き加える。

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図の何処かに消失点を設定し、先ほど作成した壁や柱の頂点から線を降ろす。

上図のように、消失点の付近は線を省略して構わない。(必然消失点付近は線が集中し紙面が汚くなるため)

 

難しいのは消失点の位置である。

消失点の取り方で一つで各部屋の見え方が全く異なってしまう。

基本的には何度も消しては点を取り直してを繰り返すか、何枚も描いて慣れるしか無い。

 

ただ、一応法則としては

  • 最も見せたい空間や図面全体の中心に消失点を取る。
  • 消失点に近いほど床が見えやすく、消失点から離れる程壁が見えやすくなる。
  • 消失点から一定距離以上離れると正しい手法でパースをとっても歪みが生じる。
  • 細長い長方形やL字型・ロの字型の図面の場合工夫が必要。

 などが挙げられる。

 

もっとも、これは実際に3枚も描いてみれば実感として体得できるので、とにかく手を動かして描いてみて欲しい。

 

STEP3:壁の高さを決め、床を描き入れる。

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STEP2で描き入れた高さ方向の線のうち、適当な一本を途中で切る。(上図では本棟右上隅の角を基準にした)

その箇所から画面に対して水平垂直な線を伸ばしていき、床を描き加えてゆく。

 

 

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そのままぐるりと床の線を描き加えてゆく。

基準となる壁を選ぶ基準は難しいが、消失点とは逆になるべく建物の端部を基準に選ぶ方がいい。

なぜならその基準に選んだ角より外側はすべてやや歪んで見えることになる

 

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 よって今回基準に選んだ壁は少し不適切だったかもしれない。

上図に見られる通り、画面左上部の部屋が歪み、壁が不自然に間延びして床が完全に隠れてしまう結果となった。

 

 

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ともあれ、建物に立体感が生じ、どのような空間なのかかなり把握しやすくなったのではないだろうか?

 

 

 

STEP4:段差や階段、家具、みえがかり線を描き加える

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次に階段を描き加える。

まずは階段がすっぽり入るであろう透明な箱を描き込む。

家具や床の線もまずはSTEP1の平面図上に描き加え、STEP2のように線を消失点に降ろし、STEP3同様床として書き込むこととなる。

 

 

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透明な箱にを参考に階段を描く補助線を引く。

実際草案前日であればこの描き込みでも十分である。

 

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今回は時間があったので、少しだけ丁寧に書いてみた。

消失点の位置が悪く、奥にやや沈んでいるようなアングルになってしまった。

 

 

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その他キッチンや洗面台、トイレなどを描き加える。

ここまで約30分である。

時間が無いときはここで終わらせても良い。

 

壁より低い高さのもの(椅子や机、棚やキッチン等)は描くのがやや面倒なので、時間がない場合は省略してもかまわない。

 

 

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更に植物も描き加えると、かなり雰囲気が伝わる。

 

 

ここまで描き込めば、単なる平面図とは比べ物にならない情報量を伝達できる。

ここまで書き込めば、この図面がオンデザインパートナーズの“growing house”(神奈川県 鎌倉市)だということにたどり着いた方もいるかもしれない。

 

少なくとも、一番最初の何の色気もないエスキスで見抜いた人の数よりは多いはずである。

 

 

 

ちなみに、描画時間は添景ナシで30分程度、階段や添景も加えると3時間弱であった。

特に後半はお手軽とは言えないが、草案の前日に考え始めたとしても十分間に合う時間である。

 

 

 

無論、模型やパースのほうが遥かに伝わる情報は大きい。

またある場合には、10分で作成したシンプルなスケッチや簡略なコンセプト模型が強力な設計指針になることすらある。

 

 

しかし、それでも今回平面パースについて解説したのは、技術の習得難易度×描画時間×情報の伝達ロスの掛け算で考えた場合、もっともコストが小さく済むプレゼンテーション手法であることを伝えたかったからである。

 

 

3DCGは技術の習得に時間がかかり、誰でも一朝一夕で身につく技法ではないが、一点透視法の手描きパースであれば、数枚も描けばコツが掴める。

 

二点透視法によるパースや詳細模型は作成に時間がかかり毎週のエスキス提出には不向きである。

 

さりとて、単なる平面図や断面図では情報としては正確でも伝わるまでに時間がかかり、話が弾むとも思えない。

  

 

平面パース図こそ最高のコストパフォーマンスを弾き出すプレゼンテーションスキルというのが、今回の主張である。

 

 

 

結びに変えて

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本エントリーは「自分には絵心がない」「設計系のアトリエに入りたいけど課題の評価が芳しくない」と考えている人をイメージしながら執筆した。

 

 

建築学科生の設計センスの優劣など、教授陣からすればどんぐりの背比べ以下の測定誤差みたいなものである。

 

 

 

それでも各課題に歴然とした評価の差が生じているのは圧倒的作業量の差異にほかならない。

 

 

仮に下手でも下手なりに膨大な量の成果物を叩きつければそれだけで一つの評価基準を満たす。

そもそも、人より二倍の量アウトプットし続ければ嫌でも設計のコツがつかめてくる。

 

少なくとも初心者同士の土俵において、量やスピードは質を圧倒的に凌駕しうる。

知識量も設計センスも模型技術も建築の才能も、所詮学生レベルなら人より一週間早く仕上げて二倍の量の模型を作るだけで蹴散らせる。

 

だからこそ質より量のトレーニングによる練度の向上が重要となる。

 

膨大な意思決定の負担を軽減するためには、慣れと経験と暗記で解答できる悩みや迷いをゼロ秒でクリアし、より本質的な悩みにリソースを割かなければならない

 

忙しい建築学科生に足りないのは「時間配分」より「努力配分」の感覚なのではなかろうか - 放漫学生の建築学科ごっこ

 

 

 

 

凡才のあなたが『自分は秀才でないから』と諦観しているその瞬間にも、あなたより遥かに才能で劣っていながら『自分は凡才ですら無いから』と1枚のスケッチを描き上げている者がいる。

 

今この瞬間にも、無能が有能を駆逐するべく、図面や模型やスケッチを生み出し学んでいるのだ。

 

 

 

絵心のない学生とは下手な絵を描く学生のことではなく、絵が下手だからと1枚も描こうとしない学生のことである。

 

最初の1枚を描き上げるか否かがあなたにとって 最初で最後の分水嶺だ。

 

 

どうかこの記事を、あなたの最初の1枚を後押しするきっかけに利用して欲しい。

 

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