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建築学科ごっこ

建築学科ごっこを通じて見つけた、模型作成、図面加工、時間管理などやりかたまとめ

CAD入門者へのオススメは果たしてJw_cadなのか?

先日pondamiya様から以下の様なコメントを1回生のうちからCADによる製図を学んだほうがいい理由を3つ - 放漫建築学科生の備忘録にて頂いきました。

 

いつも更新楽しみにしております。
たぶん個人的な好みだと思うんですが、あまりに多くのCADソフトが出回っており、どれから手をつけていいかよくわかりません。

当方、建築学を専攻して間もないものなのですが、この夏休みに少しCADに触れようと考えております。
放漫さんはどのソフトを使っておられたんですか?

 

 

「どのCADを使い始めればいいか」という疑問は建築学科生が一度は通る共通の悩みに違いありません。

解答が長文になったこともあり、こうしてブログにてお返事いたします。

 

 

いうまでもありませんが、CADはあくまで道具に過ぎず、大事なのは「何で書くか」ではなく「どのように書くか」です。

要は道具は使い方次第で個人の努力とセンスによると言う話。

 

ただ、そんな当たり前の話を聞きたくてこの記事を読んでいる人はいないと思うので、本記事では建築学科に入って最初にJwcadを学ぶべき理由独断と偏見で紹介したいと思います。

 

多少なりとも参考になれば幸いです。

 

※追記 現時点での筆者のCAD歴はJwcadをメインウェポンにArchiCADによるBIMを勉強中。また、AutoCADも多少いじったことがある程度。

 

 

 

 

 

 

 

まず、建築業界で主流となっているCADとその特性・長所等を比べてみましょう。

 

Jw_cad(2次元CAD)

価格:無料

関連書籍・関連サイト:豊富

シェア:施工・設備・土木を中心により現場に近い業界で愛用されている。「非建築家・非設計士だがCADも使いたい」という人たちの要望に答える存在

 

SketchUp(3次元)

価格:無料(高機能な有料版あり)

関連書籍・関連サイト:豊富

シェア:最も手軽な3次元スケッチ作成ソフト。建築だけでなくインテリア・工業・漫画の背景にいたるまで使われている。同じく無料のJwcadと併用して使う学生が多い。

 

AutoCAD(2次元/3次元)

価格:有料(機能が縮小された廉価版あり)

関連書籍・関連サイト:豊富

シェア:大手設計事務所やゼネコンなど、組織系の業界で愛用されている。世界でもっとも幅広く利用されているが、工業用も意識した汎用CADのため、建築設計で使うにはカスタマイズが必要な面も。

 

VectorWorks(2次元/3次元)

価格:有料(学生用廉価版あり)

関連書籍・関連サイト:少量

シェア:アトリエ設計事務所やインテリア業界など、デザイン性が重視される領域で愛用されている。他のCADソフトとの連携が低く、データの受け渡しに一手間必要。

 

ArchiCAD(2次元/3次元)

価格:有料(学生用無料版あり)

関連書籍・関連サイト:少量

シェア:比較的少ないが、BIM設計の先駆者ともいうべきソフトであり、大規模なプロジェクトを手がける分野では導入が増えている。

 

 

ちなみにそれぞれのソフトの作図感覚を図画工作で例えるなら

 

  • Jw_cadAutoCAD:色鉛筆やクレヨンのように線で表現・作図する
  • VectorWorks:切り紙貼り紙のように面で表現・作図する
  • ArchiCAD:積み木のように立体の組み合わせで表現・作成する
  • SketchUp:粘土のように立体の変形で表現・作成する

 

のような感覚だと思います。

 

このソフトの中で一番機能的に未熟なのはJw_cadSketchUpですが、学校の課題という面で見ればこの2つでも十分すぎるほどの性能があります。

 

その他RevitArchitecture、Rhinoceros、Form Z、など様々なソフトがありますが、シェアや学習のしやすさから言えば、上記ソフトウェアが有力候補と考えていいと思います。

 

(ちなみに3Dパースのリアリティや質感・光と影の具合はCADソフトではなくレンダリングソフトと呼ばれるソフトの性能差によるものです。

SketchUpだからチープなモデリングしか出来ず、高価なソフトなら繊細で美しいパースが書けるというわけではありません)

 

 

さて、ここから本題。

建築学科生はどのソフトから学び始めればいいのでしょうか?

 

 

 

建築業界はどのような図面を求めているのか?

 

○設計士・建築家を目指していない人へ

建築学科に入ったけど、実は建築家や設計士などの「図面をひくことがメインの仕事」「建物の形を決める仕事」以外の仕事を目指している人はJw_cad一択です。

例えば構造系や設備系、施工や不動産、建築史系を目指している人にとってはCADというのは仕事道具の1つに過ぎません。

その場合、卒業後に数十万もするようなCADに触れる機会は極端に少なく、まして個人で購入する可能性はかなり低いですよね。

とすれば、いくら学生時代に安く購入・ダウンロードできるからと行ってハイスペックなCADソフトに成熟するのは却って損失につながるかもしれません。

 

というわけで、建築士としてバリバリ働くぞ!という感じでない人は無料でフルに活用できるJw_cadSketchUpで十分といえます。

 

 

○設計士・建築家を目指している人へ

では、

 

建築学科に入ったからには、もちろん目指すは有名建築家!あるいは大手ゼネコンや設計事務所で大規模プロジェクトを取り仕切りたい!

 

という方の場合はどうでしょう?

 

 

アトリエ設計事務所や大手ゼネコンではJw_cadの使用率は低いことが多く、取引先の都合で一瞬使うこともある程度の需要しかない場合も多いようです。

そのため、業界によっては「Jw_cadは時代遅れ」という意見が出ることも最もだと思います。

 

しかしそれでも、僕は設計を本格的に目指す人も含めて、Jw_cadの導入は十分検討に値すると考えています。

 

 

まず、大前提として設計業を目指すのであれば1つのCADだけで仕事をすることは難しく、学生時代から愛用したソフト1本に特化して習熟することは事実上不可能だと考えて下さい。

 

当たり前ですが、就職先がどのCADソフトを中心に運営されているかは入社するまで未知数です。

AutoCADが最も主流というだけで、企業によっては自社専用のオリジナルCADソフトを使っているというところさえあり、入社後、一から新しいソフトの使い方を学ばなければならないのは避け得られない必然と言ってもいいでしょう。

 

また、上でも少し触れましたが、大企業になればなるほど取引先というものが増えていきます。

自分たちに仕事を振ってくれる相手企業や自分たちの設計を実現してくれる施工会社があなたの愛用するソフトと同じソフトを使っているとは限らず、そのたびに新しいソフトの使い方を学ばなければならないことも少なくはありません。

 

要するに、先方に合わせて使うソフトを使い分け、時に1から使い方を学び直す柔軟性が下っ端設計士には求められるのです。

 

 

このため、「一番使われているソフト」や「より万能型でなんでも出来るソフト」を探し、全てそのソフトで賄おうとすることはあまり賢明な策とはいえないのです。

将来的に上に列記したCADソフトは全部使えるというのが理想ですし、そこまで行かずとも、卒業までに2つ以上の設計ソフトを使い分けられるくらいの器量は持ち合わせる必要があると考えなければなりません。

 

 

 

さて、問題はどのソフトから学び始めるか、でした。

 

繰り返しますが、CADソフトと言うのは道具に過ぎず、どれでも書ける図面は原理上同じなのです。

それでも、筆者がJw_cadを強く進めるのは、Jw_cadには他には無い強みがあり、それゆえに将来どのCADソフトに乗り換えようとも無駄にならない大きなメリットがあるからです。

 

 

 

Jw_cadの最大のポイントはその手軽さ、瞬発力にあります。

 

 

比較的低スペックのマシンでも十全に機能し、ソフトの立ち上がりもスピーディー。

独自のユーザーインターフェースマウスジェスチャーによる軽快な作図。

無限に高速化・最適化出来る様々な裏技的付加機能。

思考のスピードで操作できる快適な機動力こそJw_cadの最大の魅力なのです。

 

 

CADソフトの普及の功績の一つはその複製・修正の容易さに基づいた生産性の向上でした。

流動的な社会のなかで、設計行為は単なるものづくりや芸術の枠を超えた経営行為とも呼ぶべき不確定な意思決定の連続へと姿を変えました。

なぜなら人口が減少し、相対的に既存の施設が余剰となっている今の日本で、それでも新しく建物を建てるということは、即ちこれまでの社会では作られてこなかった未知の建物にしか需要がない事を意味するからです。

美術館にせよ駅舎にせよ集合住宅にせよ、既存のものとほとんど変わらない、日本中どこでも使いまわせるような設計でも良かった数十年前と異なり、いまや誰も見たことも想像したこともない複雑で多様でテクニカルな施設が次々と登場しています。

 

その結果、少しずつステップアップするように段階的に設計する従来のスタイルではこの社会の変化に追いつけなくなり、代わりに走りながら進行方向を修正するような動的な設計への転換が今の建築業界には求められています。

 

不具合が生じないように慎重に設計するのではなく、とにかく不具合だらけでも一度設計を完成させてしまい、スケッチ感覚で次々と図面を作り、立ち上がった模型を見ながら問題点をフィードバックさせていく、そんな回転率の劇的なスピードアップが近年ますます加速する傾向にあります(もちろん業界によるけど)。

 

それを支えるたのが、修正や複製が極めて容易なCADソフトだったのです。

 

 

このような環境においては時間と手間をかけて美しく正しく正確な図面を完成させるだけがCADの仕事ではありません。

手早く平面図を大量展開できるラピッドプロトタイピングバイスとしてのCADもまた必要とされているのです。

 

 

そしてJw_cadはその素早さ故に、設計初期段階のエスキスやスタディに際してスケッチ感覚で作図するのに最も適した極めて現代的なソフトウェアといえるのではないでしょうか?

 

学生時代においても丁寧な図面を1枚書く能力と同じくらい大切なのは、学習のために大量に模写する練習量と、エスキス段階で図面を出力しまくりイメージを固めていく経験です。

所詮大学という狭い領域内では才能やセンスによる優劣など、書いた図面の枚数でいくらでもひっくり返せます。

 

 

 

あー、図面描かなきゃなぁ

 

なんてぼんやりしている間に1枚でも多く図面を書き上げる習慣を身につけるためには、ソフトの起動に10秒もかかるような、柱1本描写するのに幾つもの数値を入力しなければならないような高機能CADソフトはむしろ邪魔でしかありません。

 

持ち運び用の低スペックなセカンドマシンをたずさえ、大学近くの喫茶店で空きコマ時間に図面を1枚仕上げコンビニで印刷し、帰宅時間で図面を精査し修正点を整理してしまい、その日の夜には改善案を清書する、くらいのスピーディーさが実現できるのはJw_cadだけなのです。

 

よってJw_cadを学んでおけば、将来的に他のソフトに乗り換えたあとも十分有効に使う余地が残されているのです。

設計の序盤ではJw_cadでデジタルスケッチを繰り返し、設計がある程度固まってきた所でよりプロ仕様の高機能CADで製図するという使い分けこそ、大きな強みなのです。

 

 

まとめ

もちろん、だからといって必ずしもJw_cadにこだわる必要はありません。

 

正直書き上がる図面の質は全部一緒ですし、使いやすさも人によって主張が違いすぎて使ってみないと分からない面が多々あります。

(この記事の修正前の文章では「Jw_cadは使いにくい・わかりにくい」という旨の内容を書いていましたが、どのソフトも操作方法は独特で最初は苦労しますし、慣れればどんなことでもスピーディに出来るようになります。)

 

「なんとなく〇〇CADの方が好き」

という感覚的な好みも重要なので、気分でCADソフトを選んでも問題ないと思います。

 

 

ただ、無償でダウンロードでき、そして豊富な解説書と解説サイトを後ろ盾に2週間もあればほとんどの使い方をマスターできる修得コストの低さと前述の手軽さを活かした図面の展開力、それらを鑑みた場合、最も無駄になりにくいCADソフトだと思いますよ、Jw_cadは。

 

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