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放漫なる建築学科ごっこ

建築学科ごっこを通じて見つけた、建築学科で立ち振る舞うライフハックや仕事術

1回生のうちからCADによる製図を学んだほうがいい理由を3つ

建築学科 建築図面 CAD 設計課題

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本記事は巷でよく交わされる「製図は手描きかそれともCADか」など言うような矮小で空虚な議論を展開するものでもありません。

なぜなら、そんなものは論じるまでもなく両者ともに重要だからです。

 

 

“手描きで図面を引きながら、同時にCADでの製図も学ぶ”

これ以上の正解が果たしてあるでしょうか? 

 

 

例えば建築系の大学や専門学校では1回生のうちはT定規とシャーペンもしくは製図ペンによる手描きの製図が義務付けられることがあります。

建築を学ぶ初期において手描きで図面を書く行為自体の有用性は多くの建築家や教育者が認めるところであり、それを否定するつもりも筆者にはありません。

 

しかし大学や専門学校で手描きによる製図が義務付けられたからといって、CADの勉強を後回しにする理由はなにもないのです。

 

 

 

本記事で語られる“CADでの製図が認められていない1回生のうちから、それでもCAD図面の作図スキルを学んだ方がいい具体的で即物的で卑近な理由”は以下の3つです。

 

  1. 手書き製図からCAD設計へのスムーズな移行
  2. 自宅で製図練習ができる
  3. 基本的製図技能が身につく

 

以下順に解説します。

 

 
1.手書き製図からCAD設計へのスムーズな移行

第一の理由として、予め1回生の頃からCADに慣れていないため、いざ学年が上がってCADが解禁された際に対応できないという非常に多くの学生が直面する悲劇を避けるためです。私もまた、そのような哀れな学生の1人でした。

 

ほとんどのCAD教材(書籍、解説サイト、解説動画、公式のヘルプやQ&A)はその解説にあたって住宅設計、特に木造の一軒家を製図例として取り上げています。

 

もし晴れて建築学科上回生になったあなたが、そろそろCADを学ぼうかと手にとった解説書は、ほぼ間違いなく住宅の設計を例にソフトの使い方を解説しています。

向学心の強いあなたならば、きっと解説されている住宅図面を作図手順に従って図面模写することを通じて、製図作業を追体験しながらCADの使い方を学ぶことになるでしょう。

 

とすれば、ようやくCADの基本操作を学んだあなたにとって最も作図しやすいのは解説教材で取り上げられたのと同じ構造の住宅建築だというのが自然です。

 

しかし、2回生や3回生に学年が上がったあなたを待ち受けているのは集合住宅や図書館をはじめとする、敷地面積が1000平方メートルをゆうに超えるような大規模で社会的で複雑な造形を求められる、より高度な実習課題です。

 

 

当然図面の内容は、住宅設計と性質を異にする技術や知識が求められる事になります。

 

しかし残念ながら、こうした中規模・大規模な建築図面で解説されたCADソフトの教材はほとんど出回っていないません。

あなたは刻一刻と迫り来る提出期限に苛まれながら、試行錯誤して自分なりの図面の描き方を模索しなければなりません。*1

 

あなた自身が1回生から手描き製図によって磨いてきた設計能力に、CADスキルがまったく追いついていないため、せっかく学んだCADスキルを即座に発表出来ない不幸に見舞われることになります。

 

 

 

この点、1回生の頃からコツコツCADの練習を重ねてきた学生の場合、課題の内容に合わせた速度でCAD運用能力が上達していきます。

故にいざ実習でCADの使用が解禁された際、実にスムーズにデジタル上の製図に移行できるのです。

 

2.自宅で製図練習ができる

第二の理由として製図作業におけるCADの機動性の高さが挙げられます。言い換えるならば、図面1枚を書く際の労力が格段に小さく効率的に製図できるという点です。

そして、この製図のしやすさが巡り巡って手描きでの製図の品質さえも大きく向上させることになるのです。

 

 

放漫な建築学科生であるところのかつての私は、スケッチブックや方眼紙上でのエスキスの後、いきなり製図台に向かいそのまま提出図面にとりかかっていました。

 

設計構想が低密度なまま本番の図面に立ち向かっていたわけですから、当然製図の途中で何度も何度も手が止まります。

扉の寸法、壁や床の厚み、階段の描き方、細部の納まり等、こうしたディティールをエスキス段階では深く考えずに済ましてきたため、製図作業において、私の線を引く手を幾度と無く停滞させます。

 

私はその度に、調べ物のために図書館へ足を運んだり、改めてスケッチブック上のエスキスに立ち返ったりせねばなりませんでした。

ミスや書き損じも少なからぬ回数起こりますが、もはや一から書き直す体力も時間もその時の私にはありませんでした。

 

 

その結果本来製図台の前で行う必要のない作業やエスキスや調べ物を、わざわざ製図台の前で行っているため、1枚の図面を描く際の生産性が著しく低くなっていたのです。

 

 

 

悲劇の根本的原因は、手描きでは図面を1枚清書するコストが大きい点にあります。

 

仮にエスキス段階と清書段階の間にプレ清書ともいうべきディティールを検討する期間を設ければ、当時の私の製図速度も図面の品質も見違えるほど改善されたはずです。

何しろ一度プレ清書の段階で描いたことのある図面ですから、作業全体を見通せますし、一回目の製図では曖昧だった部分や悩んだ問題はすべて解決しているはずです。 

 

しかし、そうしたプレ清書は清書の予行演習みたいなものですから、手書きで行う場合には気軽に始めることが出来ません。

時間も労力もかかるため、大抵の学生は構想段階のプレ清書を清書した図面としてとして提出してしまうか、端からプレ清書という工程を省略していきなり製図するという選択をとることになるわけです。

 

 

ところが、CADを使えることで、清書を行う前の製図が実に気軽に行えるようになります。

もともとCADが製図を効率的に行うツールである点に加え、わざわざ製図室に行かずとも、自宅でも喫茶店でも図書館でも製図が行えるという点が実に有利に働くのです。

 

その結果、図面を提出する分の1枚だけを描くより、図面を一度CADでプレ清書してから改めて手描きで図面を提出したほうが、より早く課題が終わるという魔法のような現象が起こるのです。*2

 

 

3.基本的な製図技能が身につく

最後にごくごく当たり前の事実としてCADの練習がそのまま製図の基礎的リテラシーの修得に繋がる点をあげなければなりません。

 

 

残念ながら多くの大学・専門学校では製図の基本的リテラシーを授業形式で体系的に教えてくれるところは多くありません。

あるいはあったとしてもカリキュラムの都合上大きく時間を避けないのが現状です(無論大学にもよるでしょうが)。

 

私たちは「学生にる自主的学習」の名の下、自力で図面を描く技術や作法を手探りで学ぶことになります。

 

しかしたとえ製図に関する座学をいくら受講しても、図面の描き方を教える教本をいくら読み込んだとしても、根本的な製図能力はいっこう上達しません。

模写やトレス、あるいは自分の設計を通じて、実際に手を動かして図面を何枚も描いてこそ講義や指南書の内容に価値が生まれるはずです。

 

しかし、本来最も重要であるはずのその図面の模写ですら、課題で1,2回させられただけというのが現状であり、主体的に図面模写に取り組み自主的に製図の基本を学んだ学生など、ほんの一握りではないでしょうか?

 

 

初期の学習において、CADの学習は単なるソフトの使い方を覚える以上の効能があります。

ソフトの機能を覚えるために図面を書きながら覚えることとなるため、必然的にこの図面の模写作業を繰り返すこととなるはずです。

同じ図面を何度も何度も書き、最終的に何も見なくてもその図面が書けるようになれば、それだけであなたの図面の見方は大きく変わります。

恐らく、教授陣が口をそろえて唱える「CADをキチンと使えるのは手書きで製図ができる人だけ」という言葉が腑に落ちる日も来るでしょう。 

 

 

最後に 

 

無論、CADを一回生のうちから使いこなしていたと言うのは、設計現場でのCAD使用量から考えれば誤差にも満たない極めてちいさな差異でしかありません。

たかだか1年学ぶのが早いか遅いかで優劣が決まるほど、建築に関わる学問やスキルは浅薄なものではありません。

 

 

所詮CADか手描きか等、道具の問題にすぎず、常に最重要なのはあなたの製図能力の向上にあるはずです。

いかに高額なCADを用いて充実した機能をフルに活用した所であなたの製図能力を超えた図面を仕上げることは出来ないのですから。

 

 

▼入門に最適?Jwcad のメリットとデメリットについて

houman-arch.hatenablog.com

 

▼このワンクリックが大きなモチベーションです。何卒。

 

*1:実はそれほど困難な模索ではなく、むしろ楽しい研究活動でさえある。提出期限がなければの話だが。

*2:ちょうどある書物を頭からじっくり読みこむよりも、ざっと下読みしてから再読したほうが結果的に素早く正確に文意を汲み取れるようなものだ。1回生にとってのCADの導入はいわばこの下読みの精度と速度を劇的に改善したことを意味する。